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東京地方裁判所 昭和62年(特わ)736号 判決

国籍

韓国

住居

東京都文京区千駄木三丁目三番一二号

会社役員

佐藤昌勲こと左昌勲

一九五一年八月二一日生

右の者らに対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官寺尾淳出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金二〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都台東区東上野二丁目一五番一一号(昭和五八年五月ころ以降は、同区上野二丁目一四番一号)に事務所を置き、埼玉県川口市内において「ジャンボ」の名称でパチンコ店を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外して仮名預金を設定するなどの方法によりその所得を秘匿した上

第一  昭和五七年分の実際総所得金額が六〇〇二万一七〇八円あった(別紙1昭和五七年度の修正貸借対照表参照)のにかかわらず、同五八年三月一五日、東京都台東区東上野五丁目五番一五号所轄下谷税務署において、同税務署長に対し、同五七年分の総所得金額が一三四六万円でこれに対する所得税額が一四一万七四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(昭和六二年押第八八四号の2)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年度分の正規の所得税額二八七〇万四七〇〇円と右申告税額との差額二七二八万七三〇〇円(別紙2昭和五七年度の脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和五八年分の実際総所得金額が八五七三万七四九七円あった(別紙3昭和五八年度の修正貸借対照表参照)のにかかわらず、同五九年三月一五日、前記下谷税務署において、同税務署長に対し、同五八年分の総所得金額が一四九一万円でこれに対する所得税額が一八九万二五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(前同押号の1)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額四六五九万五三〇〇円と右申告税額との差額四四七〇万二八〇〇円(別紙4昭和五八年度の脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏の佐藤治、秋山正雄に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  現金調査書

2  預金調査書

3  普通預金調査書

4  当座預金調査書

5  定期積金調査書

6  定期預金調査書

7  有価証券調査書

8  建物調査書

9  機械装置調査書

10  商品調査書

11  車輛運搬具調査書

12  建物附属設備調査書

13  器具及び備品調査書

14  土地調査書

15  未収金調査書

16  事業主勘定調査書

17  未払金調査書

18  未払手形調査書

19  借入金調査書

20  買掛金調査書

21  元入金調査書

22  預金利子調査書

23  雑所得調査書

24  申告事業所得金額調査書

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  押収してある所得税の確定申告書二袋(昭和六二年押第八八四号の1、2)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は所得税法二三八条一項に各該当するので、いずれも所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し、その罰金の額についてはいずれも情状により同条二項を適用することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項によりこれを右懲役刑と併科することとし、同条二項により判示各罪の右罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で処断すべきところ、本件の脱税額は判示のとおり二年度合計七一九九万円余りの高額に達する上、右脱税のほ脱率も平均九十数パーセントという高率であり、その犯行の動機をみても格別同情すべき点はなく、その手口も、パチンコ店の経営がもともと所得把握の困難な業種であることに目をつけ、売上を除外して仮名預金を多数設定するなど悪質であり、被告人の刑責は軽視することはできないが、他方、被告人は、本件発覚後修正申告を行い既に本税、重加税等をすべて納付していること、被告人には前科、前歴が全くなく、本件の非を深く反省悔悟していることなどの有利な諸事情も認められるので、被告人を懲役一〇月及び罰金二〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 反町弘 裁判官 髙麗邦彦 裁判官 平木正洋)

別紙1

修正貸借対照表(事業所得)

佐藤昌勲こと

左昌勲

昭和57年12月31日

〈省略〉

別紙2

修正貸借対照表(合計表)

昭和57年12月31日

〈省略〉

別紙2

脱税額計算書

年分 57

〈省略〉

別紙3

修正貸借対照表(事業所得)

佐藤昌勲こと

左昌勲

昭和58年12月31日

〈省略〉

修正貸借対照表(合計表)

昭和58年12月31日

〈省略〉

別紙4

脱税額計算書

年分 58

〈省略〉

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